過日お知らせ致しました、工房藍のプロデュースをする北郷知子さんより、田中賢二氏の作品、工房藍への想いを綴ったご挨拶が届いています。
長文ですが、是非ご一読ください。
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人は死ぬ。
誰一人例外なくいずれ死ぬ。
だが、優れた芸術作品はある意味永遠の命を持つ。
私たちがこの世に存在しなくなった後も、魂を込めて作られた作品たちは、生き生きと何世紀にも渡り輝き続ける。
時として妄想する。輪廻転生を繰り返すうちに、過去世で自分が作ったり、描いたりしたものに巡り合っている可能性だってある。そんな不思議な出会いをしたら、それらの作品はどんな風に私達に語りかけてくるのだろうか、、、
◇出会い
2016年の年明け、私は染め物を始めようと決めた。ただ、何となく…理由などまったく無かった。染め物だって色々あるのに、藍染めをやるとなぜかそう決めていた。
その後は、誰彼問わず『藍染めをやりたい、誰か紹介してください』とお願いし続けた。
そんなある日、日頃お世話になっている先輩から、『友人のお父様が藍染作家だよ!』と連絡を頂いた。
そして、紹介されたのが田中賢二先生だった。
2016年8月、先生とその素晴らしい作品群との運命的な出会いだった。
初めて訪れた小淵沢の工房は、自然の中にひっそりと佇みとても居心地の良い空間だった。
そこで、触れた藍は仄かに暖かく、その香りはどこか懐かしい空間に連れて行ってくれるようだった。
染めていくほどに深まる藍の色にどんどん惹き込まれた。
そして藍染めの抽象的で観念的な先生の作品に息を呑む。
藍染めって伝統工芸ではなかったの…?
この溢れるエネルギーってどこからくるの…?
目の前に広がる世界にあっという間に虜になり、すっかり魂を持っていかれてしまった。
その場で月に一回先生の工房に通うことを決めた。
当時の私は中国で縫製工場を経営しており、月一で小淵沢に通うのはとてもハードルが高かったが、コロナで行き来が出来なくなる2020年2月まで一度も休まず月一で通った。
毎回の工房通いは、田中先生の作品とその技術に魅せられ続けた日々だった。
そして、いつの日かこの作品群を世に出せないか、先生の技術を後世に残せないかという思いに取り憑かれていった。
想いは、現実化する。
2019年1月、SNSを通してフランスに住むマリアという協力者を得た。
彼女とのご縁で、2019年9月にイタリアのScalvini museum(スカルビニ美術館) で田中先生の個展開催が叶ったのだった。
その後、カンヌやスイスでも個展開催の予定だったが、このコロナで世の中が激変してしまい、仕切り直しを余儀なくされた。
世の中は、先行きの不安を感じている人で埋め尽くされている。かくいう私も。。
目的と居場所を失い、実に苦しい時間を過ごした。
その時間の中で友人達に助けられ、自分に深く向き合って行った時、雲の隙間から陽が射すように田中先生の作品の数々が改めて瞼にしっかりと浮かび上がってきた。
生き生きとした先生の作品達が目の前に弾けるような勢いで迫ってきて、途轍もなく幸せな気持ちに包まれていった。
そうだ、こんな世の中だからこそ先生の作品を一人でも多くの人達に観て頂こう。
作品から溢れるエネルギーと藍(愛)の力を少しでもたくさんの方達に広く感じてもらおう。
このアートを残したい。先生の素晴らしい技術を伝えていきたい。
いつか、転生した自分が未来の時代で再びこの作品を観れるように・・・。
この度、工房藍のプロデュースをさせて頂くことになりました。
国内外の個展の企画、ワークショップの運営、田中先生の絞りや染めの技術の継承活動、
その他、色々とトライしていきたいと思っています。
これからも皆様と共に藍の持つ素晴らしさを共有できたら幸いです。
今後とも工房藍共々、どうぞ宜しくお願い致します。
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